時計兎
序章(1)
音もなくドアが閉まった。
無音であるのにそれに気付いたのは唯一の光源を失ったから。
少女は突然の不意打ちに困惑したが、とにかく部屋に入り、彼の所在の有無を確認しよう
そう考えていた。
本当に無音で闇が濃い。
それでも、素足の裏に伝わる確かな床の感触で廊下を進んだ。
気色悪いぬめりを無視して。
蛍光灯が切れているのだろうか。
電源を入れても明かりが点く様子が全くない。
光を求め、さらに奥へ進む。
――コツン
骨に染みるような、澄んだ音が部屋中に響いた。
爪先が、球のような何かを突いたようだ。
突いたそれを手に取ってみる。
――首
人形の質感と軽さからはありえないその手触りから彼女は全てを理解した。
彼は、いた。
少女はそれを手荒く投げ飛ばし、逃げた。
嗚咽と悲鳴の混交した啜り泣く音が聞こえ、来た道を全力で疾走して戻る。
だが、床のぬめりに足を取られその中へ飛び込んだ。
それは顔や両手、白い浴衣にまでこびりついた。
――何これ
臭いでわかる
血の臭いだった。
無音であるのにそれに気付いたのは唯一の光源を失ったから。
少女は突然の不意打ちに困惑したが、とにかく部屋に入り、彼の所在の有無を確認しよう
そう考えていた。
本当に無音で闇が濃い。
それでも、素足の裏に伝わる確かな床の感触で廊下を進んだ。
気色悪いぬめりを無視して。
蛍光灯が切れているのだろうか。
電源を入れても明かりが点く様子が全くない。
光を求め、さらに奥へ進む。
――コツン
骨に染みるような、澄んだ音が部屋中に響いた。
爪先が、球のような何かを突いたようだ。
突いたそれを手に取ってみる。
――首
人形の質感と軽さからはありえないその手触りから彼女は全てを理解した。
彼は、いた。
少女はそれを手荒く投げ飛ばし、逃げた。
嗚咽と悲鳴の混交した啜り泣く音が聞こえ、来た道を全力で疾走して戻る。
だが、床のぬめりに足を取られその中へ飛び込んだ。
それは顔や両手、白い浴衣にまでこびりついた。
――何これ
臭いでわかる
血の臭いだった。