時計兎
駅前の信号を待っている。

赤から青になり、その拘束が解けると、蜘蛛の幼虫が拡散するように人々が歩きだす。

皆、虚ろな目をし、蝋人形のようなその歩みには希望がないようにも見えた。

――時間がない

欝陶しい人込みを縫うようにして先を急いだ。

そして、手慣れた手つきで改札を通り、電車に乗った。
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