時計兎
死の音

それを聞くたび久遠の体は形を変える。
無音の中では嫌でも死の音が聞こえ逃げることができない。
絶対的死を喉元に突き刺される感覚。

幸い今回の死の音ではすでに感覚がなかった左手首が飛んだ。

突然、飛ぶ音と同時に部屋に静寂が戻った。
空間が闇にのまれたような静けさ

久遠は糸が切れたように泣くのをやめていた。
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