時計兎
序章(5)
――痛いよぅ…

直角に曲がった薬指をかばいながら窓に向かう。足元にあるぬめりに注意し、机や棚などの家具にぶつからないよう歩幅を小さくして歩く。
何か冷たい形あったものに爪先が当たったが気にせず進む。それがなんなのかは予想がついていた。
自然と血ではない液体が頬を濡らす。本来美しく透明のはずのそれだったが頬に付着していた彼の血と混じり赤く染まった。

血の涙。

ようやく窓にたどり着いた。
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