時計兎
もちろん彩夏は久遠と同じく絶望を見た。この空間だけが現実と隔離されているような感覚。まぶたが開いているのかどうかもわからない暗闇の中、彩夏は大声で泣いた。ベッドに顔を押し付けて、シーツを手ににぎりしめる。

いつ首が落ちるかという恐怖。

本当に恐いのは、見える恐怖より見えない恐怖。自分が死ぬのはあと十分後、五分後、三秒後?
絶対的死を目の当たりにして久遠は自殺。その時使ったあれも手の届く範囲にあった。
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