時計兎
久遠 悠(クオン ユウ)
夢を、見ていた


全力で疾走する。
後ろから迫る絶望に押されて。

紫の空に朱い月が映えている。流れていく木々や地面も朱色に染まっている。




どれだけの時間走っただろう。



時間の感覚がない。
視界が邪魔になってきた。
聴覚など、とうにない。


混乱の中、当たり前の疑問が浮かんだ。

僕は何に逃げているのだろう。
ふとわからなくなり、足を緩め、止まった。
不思議と息切れはなかった。


そして、踵を返した―
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