時計兎
思い切り腹を殴り上げられたような、内臓が一度に持ち上がったような畏怖。


絶対的強者に自分の生死を握られた恐懼。





それは捕食者と対峙した時に抱く感情と同じもの、だったろうか。





背中におびただしい数の小さな虫が走るような悪寒。吐き気と共に視界が揺らいだ。
全身の神経が警告を発する。


それを本能が無視した。





体が動かない。
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