漆黒の黒般若
ザァッ――



6月も半ばに入った

ここのところ雨ばかりでなかなか外に出れない楠葉はしゅんとした様子で部屋から外を眺めていた


斎藤さんは相変わらず隊務で忙しそうでなかなか屯所にいない


しかし帰ってくれば楠葉が寝るまで一緒に話しをしてくれる


昨日は確か…
斎藤さんの猫嫌いについて話したんだった



小さい頃からどうしても猫がダメな斎藤さんは猫がどんなに怖いかを話してくれた


そんな斎藤さんがなんだか可愛くてついつい笑ってしまう


猫っ毛や、猫がダメなところ、寝癖がすごいこと


佐之さんが言っていたとおり斎藤さんは案外こういった可愛い部分がたくさんあるのではないだろうか



そう考えると雨の憂鬱な気分も晴れていった


しかし楠葉にはこのこと以外に考えなくてはいけないことがあった


それは死ぬ間際芹沢さんが残した言葉だ


“裕が生きてる”


あれから半年近くたつ


しかし楠葉に死んだとおもっていた裕の行方などわかるはずもなく捜索は難航していた



一応近藤さんや土方さんをはじめ、幹部の人たちにも話したが彼らもなかなか見つけることができないでいる



やはり裕は死んだんだ


芹沢さんから裕のことを聞いた時は混乱したが後々考えたらとても嬉しいことだった


また裕に会えるかも知れない


そんな期待が胸を占める


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