ルームシェア



こないだのストーカーちっくな人には好きじゃないとか、付き合ってないとか言ってたけど。

そんなの嘘だよ。


ずるいよ。


あたしと付き合ってまで、この人を守りたかったの?


あの女から守るために、あたしと付き合ったの?


分からないけど。


そうじゃないって否定してほしい。


でもさ、そんなの聞く勇気なんてないよ。


だって、気づいちゃったもん。


こんなの気づかないわけないんだよ。



ずるいよ…。


あたし、雄大のこと、好きになってたんだ。


だけど、しょせんはあたしたち偽りだからさ。



あたしって今、邪魔な存在?




「雄ちゃん、久しぶり…」


彼女は、あたしがいるのをためらってるみたいに、必要以上にあたしを見てくる。


邪魔者は退散しなきゃかな?


「あのさ、紗弥加…」

「雄大…」


雄大が彼女になにかを言おうとしたのを遮った。


「あたし、学校に忘れ物してた」



こんなところにいたくない。


「え、まぢで?」


「だから、取り入ってくる。」


精一杯の笑顔を向けた。


雄大は気づいてるかな?

あたしが無理してることに。


「あ……うん、」


きづかないよね?

たかが一ヶ月だし。

あたしたちの関係って、それくらい浅いもんね。



「じゃあ、ごゆっくり~」



あたしは急ぎ足でその場を去った。


どうせなら気づかなきゃよかった。


すきなんて、思わなかったらよかった。



溜まりにたまった涙は、あたしの頬を流れ落ちる。

拭っても、拭っても、止まらなくて。


苦しくて、苦しくて。


かもしれない。

なんかじゃなくて。



好きなんだよ。




あたしはそのまま駆け足で、駅へと向かった。









< 40 / 57 >

この作品をシェア

pagetop