ルームシェア
2万の行方
――カラン…
「あら、香織ちゃん?
今日はバイトの日じゃないわよ?」
「ユリさん…」
あのあと、あたしは駅まで歩いてきて、行くところもなかったので、バイト先にかおを出すことにした。
夕方時とあって、高校生が多い。
あたしはカウンターテーブルに腰かけ、ユリさんのニコニコとしたかおを見る。
「バイト、させてください。」
今のままじゃダメだ。
そのうち雄大から連絡がかかってくるだろう。
そのとき、こんな気持ちのままあたしは家には帰れない。
だから、その時のために、バイトをして邪念を払いたい。
「…それはいいけど。
とりあえず、目を冷やして化粧直してからね」
「あ、はい…」
理由なんてなにも聞かず、あたしをルームにつれていく。
穏やかな雰囲気は、あたしの心を和らげる。
ここがあたしの居場所。
そう思わせるような空気があたしは好きだ。
だから、なにか悩みがあるときはいつもこうやって店に来る。
高校生の時からの習慣。
ユリさんはあたしになにも聞かずに、
「いらっしゃい」
って、ケーキを特別に出してくれた。
そんなユリさんか好きだ。
「あの、ユリさん…」