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さよならと、
こんなことにならなかったら、あたしと雄大はきっと接点がないままだったかもしれない。
そんでもって、恋なんてしないで、バイト三昧の毎日。
それはそれで悪くはないんだろうけど、なんだか少し物足りない。
少しの前の生活に戻るだけ。
それだけのことなのに、なんだか心がぽっかり空いてしまった。
雄大はなんとも思ってないだろうな。
あたしが、
「この家を出ていくことになった。」
なんて伝えても、顔色変えずに頷いただけ。
しょせんは偽物の恋人。
あのときの、雄大は寂しさをまぎらわすためのものだったのかもしれない。
――パチン
「荷物、こんなもんだよな?」
「あ、うん」
もともとあたしの荷物なんて微々たるもの。
雄大のスーツケースを借りて、全部積め終えた。
ガランとしてるわけじゃないけど、なんだか少し広く感じる。
「行くなよ。」
そう引き留めてくれないかな、なんて期待もするけど、そんなことはありえないだろう。