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声を押し殺して、泣くだけ泣いたあと、あたしはぐっすりと眠りについた。

朝起きたときには、スーツケースなんてモノはこの部屋になくて、あたしたちは別れないで二人で今まで通りに暮らしていく。

そんな幸せな夢を見ながら。


だけど現実はいつもあたしを地面に叩き落とすみたいに残酷で。


なんにもない部屋を見渡し、あたしは大学に行く準備を始める。

毎日がこんな風にすぎていく。


雄大とはなんだかぎこちないまま。

別れたから当たり前だけど、あたしとの距離がある。

二人で大学に行くこともなくなった。

あたし雄大地が朝早く出ていくのを部屋の中で聞きながら、出ていったあとの静かな部屋へと足を踏み入れる。

変わらないのは、いつも通りご飯があること。


今日には出ていくあたしのことなんか、構ってはくれないのだろうか。


そう考えてると、また涙が溢れだした。


泣かない。

泣きたくない。

そう思うのに止められない。




こんな顔じゃ、学校にもいけない。

あたしは休むことをメールで伝え、顔を洗うために洗面所へと向かった。






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