ミルフィユと猫被り


「お前だって……本気ぢゃないのかよ…!」



兄貴は、少し力を緩めて、首をかくんと落とした。


切なそうに顔を伏せたまま力を入れたあと、ふっと力を抜いて俺をもう一度睨んでから、その場に座り込んだ。



「え…?」


「もうなかったことにするから、早く言えよ。許すわけぢゃねーけど『俺ら』の作戦だろ?」



むすっと唇をへの字に曲げて、悔しそうにあぐらを組んだ足首を見ながら、俺が喋り始めるのを待った。


俺が携帯を取り出して兄貴の前に置くと、目だけで携帯を見た兄貴に言った。



「実は、さっき電話あったろ?あん時、灯貴が桜空にアド教えていーか?っつーから、別にっつったんだ。したら、あんなタイミングでメールすんだもん。俺だって焦ったよ。」



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