おじさんって言うな! 〜現役JKに恋した三十男の物語〜
 有希か?

 まさかな。それに、そういう期待は必ずハズレる、という経験則が俺にはある。


 30年近く生きてきたが、『もしかして……?』と何かを期待しても、それが当たった試しがない。逆に心配して、それが当たった事もない。


 良いも悪いも、いつも事件は突然に、思いもよらない時に起きてきた。要するに、俺には予知能力がないという事だろう。


 昨日だってそうじゃないか。チャイムが鳴った時、どうせ新聞の勧誘とか回覧板だろうと思ったら、思いもよらず有希だった。


 だから今チャイムを鳴らしたやつが、有希ならいいなと期待した瞬間、そいつは有希ではなくなっているんだ。


 俺はノロノロと玄関へ向かった。服は昨日のままヨレヨレ。髪はボサボサで無精髭が伸びているが、そんなの構うものか。


 俺は、「はいはい、今開けますよ」とか言いながら、ドアをゆっくり開いた。回覧板を持った、正体不明の隣のおばちゃんを想像しながら。


< 141 / 206 >

この作品をシェア

pagetop