彼女志願!

なぜか腰を据えたおじさんが


「加奈ちゃんは銀行にお勤めだっけ……?」


と、尋ねると、お姉ちゃんは苦笑して首をかしげた。



「産休が終わったら、戻るつもりではいるんですけど……」

「へぇ……立派なもんだねぇ」

「そうなのよ」



おじさんの言葉に、お母さんが同調する。



「なのに萌は小さいころから自分勝手で、お姉ちゃんたちみたいにちゃんと出来なくて。理恵ちゃんはちゃんと大学に行って卒業したのに、萌ったら好き勝手、小説だか漫画だか知らないけど……親不孝で、恥ずかしいわ、本当に……」



そして湧いたお湯をポットにそそぎ、大げさにため息をついた。




恥ずかしい……?




それまで限界まで押さえていた何かが



プツン、と何かが切れる音がした。


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