そしていつかの記憶より

15話

「降ってきたな」

木原くんが、窓の外を見上げながら呟いた。
文庫本を手にしていた私も携帯をいじっていた陽子も、その言葉につられるように外を見る。


「ホント・・・智也、学校に傘持っててたかしら」

陽子は窓に近づいて、心配そうに言う。
本当に、智也くんが大事なんだなーと心が暖かくなる。


「ね、いつか。アンタは傘持ってきた?」
「あ・・・」


迂闊だった。
今日 雨が降ることは事前に知っていたのに、
朝遅刻しそうだったから傘のことはすっかり忘れて来てしまった。


「アタシの傘入ってく?・・あ、でも確かアタシ達家遠いんだっけ・・」

陽子が色々提案してくれるが、どうやら濡れて帰るしかなさそうだ。
ちょっと憂鬱だな、なんて肩を落としていると、思わぬところから声がかかった。


「・・・俺の傘使うか?」


木原くんが、そう言って傘を渡してくれた。
よく見かけるような、ビニール傘だ。

「いいの、木原くん?」
「ああ、当分ここに居るし、ささ待ってなきゃいけねーから」


でも、それじゃあ木原くんが濡れちゃうんじゃ・・・?

「、俺ここに予備置いてっから心配すんな」
「あ・・・そうなんだ・・じゃあ、借りてくね?」
「おう」

木原くんは、相変わらずぶっきらぼうな言い方だけど、すごく優しい・・・。

「じゃあアタシ、智也が傘持ってったか確認したいから帰るけど・・・いつかは?」
「あ、私も帰るかな・・・木原くん、本当にありがとう!」

傘を少し揺らして、木原くんにお礼を言う。
目が合うと、木原くんは少し笑ってくれた。

「ああ」

やっぱり、木原くんは笑ってるほうがいいな、なんて思ったり。
< 40 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop