そしていつかの記憶より

22話

あの日以降。

私の頭に過ぎるのは、木原くんのことばっかりだった。



(もしあの”仮説”が本当だったら───)




仮説、というのは木原くんのスケジュール帳から出てきた写真とプリクラのあの件についてだ。
私と木原くんが、記憶を失くす前に付き合っていたんじゃないかという、仮説。




(・・・もしも本当に付き合っていたなら、私の部屋とかにも何かしら証拠が残ってるはず・・・)



たとえば、あの木原くんが持っていたのと同じ写真とか、プリクラとか。
その他に木原くんからもらった物とかがあれば、昔の記憶が思い出せるかもしれない。


お医者さんには思い出す可能性は低いと言われたけど、やってみなければわからない。


私はそう思って、自分部屋の中の探索に当たった。






まずは机の中の引き出し。



「あ、懐かしい」
昔使っていたノートが出てきた。
でもその中に怪しいものはない。

次に収納スペースの中。
ここにも怪しいものはない。

他には──





「あ、」





出てきたのは、大学1年の時の写真だった。
おそらく、新入生歓迎会後の写真だろうか?

映っているのは私と、陽子と木原くんとささくん、そして加奈先輩。
ふじ先輩が映っていないのは、おそらく、撮ったのが彼だからなのだろう。




「そうだ・・・」






私はその写真を握り締めて、部屋を飛び出した。
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