恋しても、愛しても、夢は見ないから
『指輪は受けとるから、
俺と付き合って?』
『…っ!だから…!』
言いかけた私の口に人差し指をかざし、
言葉を制止する。
『…一ヶ月』
…?
『一ヶ月だけ。
お試しで付き合ってみて
やっぱりダメならやめていい。』
面倒くさい…
でもこの状況で断れば、
もっと面倒なことになりそう…
思っていたより、幸先輩の
王子様スマイルの下には俺様系の
強引さが隠されてる気がする。
『わかりました…。
一ヶ月だけなら。』
『でも条件があります。』
『……?条件?』
『はい。
周りには付き合ってると
言わないことです。』
『……わかった』
私は指輪を約束通り押し付けると、
幸先輩の側を離れようとした。
その瞬間、腕を強く引かれて
バランスを崩してよろめいた。
またあの香り…
暖かく広い腕の中に
すっぽりと収まってしまってた。