一部のよそ
 耳につくかつかないか、それこそが重要なんだとばかりに、ひとたびうるさいと思うとますます拍車がかかる。ということは、気づかなければないも同じ、本来はさもないことなんだろう。

 首筋を焦がしたい太陽の誤算は、たったひとつ、その表面にぷっくりと浮かぶ汗だ。

 思ったようにはいかない。それがたとえ太陽だったとしてもそうなのだから、思ったようにいかなくて当然だったんだ。あの抜けるような白い肌も、白い煙にはならなかった。

 自殺だった――ハンカチを出して、首筋に伝う汗を拭う。太陽が首筋を狙う――アスミの死因だ。

 交通事故でも、不治の病でもない。一昨日のことだ。上京したときには予想もしなかった不倫という事実に耐えきれず、車でガス自殺した。28歳の誕生日が終わろうとする晩だった。
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop