誘う華
頬に痛みが走った。
触ってみると深くはないが切れていて、血が頬を伝う。


「カカカッ…やはりいい匂いだね。そそるよ…」


どこからともなく、加工された機械の様な声が響く。

「あたしは逃げないから!…お願いだからゼオンを傷つけるのはやめて!」


「ベル!だ…めだ!…にげっ!」

言い終わらないうちにゼオンはあたしの前から消えていた。
左に弾き飛ばされ、瓦礫に埋もれていた。

「ゼオン!……お願いだからやめてよ……」



懇願するように床に膝をつき、涙をながしながら嗚咽が漏れる口を手で塞いだ。


「…いいよ。彼も、もう起き上がれないみたいだし。何しろ彼は弱すぎてあきちゃったよ。君を連れて来るだけが僕の仕事だからね。」


あたしを連れて来る?

ゼオンは無駄に傷つけられたの?
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