黒い炎
幸福
翌日…朝早くから綾部家には
鈴の姿があった。


桜から連絡をもらった鈴は、
いても立ってもいられなかったのだ。


「ゆうやくん…頑張ったね」


ベッドに腰掛けた鈴は眠る優弥に、
そう…声をかけた。


涙で濡れた目尻にそっと手をやり、
頭を撫でる。


眠る顔はまだ幼さを感じる…大人っぽく
見えても、優弥だってまだ高校生だ。


「まだ甘えたって許されるよ?ゆうやくん」


優弥が泣いたの…桜から聞いて
やっぱりと鈴は思った。


両親にも誰にも弱さを見せず、強い自分
を演じてきた優弥。


ただ、強がっていただけ。


弱さを上手く隠していただけ。


「わたしがいるよ…だから泣かないで」


眠る優弥の手を握り、鈴は静かに寄り添った。






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