竜王様のお気に入り
イオリは大きく息を吐く。


「何よ!」


シリュウは、悟ったような顔をしているイオリに、八つ当たりした。


「シリュウ様。
殺されずに済んで良かったですね。
きっと、ヤヨイ様が竜王陛下をお止め下さったのでしょう。
感謝なさいませ。
私はこれからあなたの代わりに、竜王陛下のお咎めを受けに行って参ります。
では・・・。」


それだけ言ってイオリは、軽い会釈をして竜王陛下の自室へと、足を向けた。


「お咎めって何よ!
あたくしが何をしたっていうのよ!」


普通に考えれば分かるであろう事も、シリュウには理解できなかった。


部屋の主の許可なしに、入室するという行為が、どんなに非礼な事なのかも。


しかも、部屋の主はあの竜王陛下だ。


殺されなかったのは奇跡に近い。


王妃という言葉は、シリュウの思考力を奪ってしまう程に、とても魅惑的だったのだ。

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