竜王様のお気に入り
「ハクリュウ!聞こえたよ!
お願いじゃなくて、今、命令してたでしょ!」


ハクリュウはビクッとして、恐る恐るヤヨイを確認した。


腕を組み、イオリの側に仁王立ちしている。


「いや・・・違うよヤヨイ。
そんなこと、する訳ないだろう。」


あたふたと取り繕いながら、ハクリュウはヤヨイの方へと、歩みを進めた。


そしてそっと、ヤヨイの肩を抱く。


イオリは涙目で、近くに来た陛下を見上げ、慌てて頭を下げた。


「我は部屋へ戻る。
コウリュウ。
この件については、全てをコウリュウに一任する。
善きに計ってくれ。」


そう言うと、竜王陛下は未だかつて、見せた事のない微笑みを、コウリュウに向けた。


そんな兄の笑顔を見て、驚いてはみたものの、心なしか嬉しそうに、コウリュウはため息を吐くのであった。

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