竜王様のお気に入り
そんなヤヨイを気にする風でもなく、ゆったりとハクリュウは立ち上がった。


「部屋に戻ってゆっくりと話さないか?
ヤヨイ、疲れたろう?」


ハクリュウの眉目秀麗な整った顔立ちに、先程の威厳に満ちた、迫力ある雰囲気は感じられない。


ハクリュウはそのまま階段を下りるのだが、ヤヨイが付いて来る気配がない。


椅子の隣で躊躇しているヤヨイを振り返り、ハクリュウは両手を広げた。


「おいで。」


ヤヨイは、すーっとハクリュウに引き寄せられ、軽々と片腕で抱き上げられる。


「きゃぁっ・・・!」


思いもしなかった、ハクリュウの行動のおかげで、ぐらぐらと揺れる体のバランスをとるために、ヤヨイは咄嗟にハクリュウの首に手を回した。


当然の態勢ではあるが、とても顔が近い。


ヤヨイはすぐ目の前で自分を見つめる、黒く輝く瞳に、くすぐったい気持になるのであった。

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