竜王様のお気に入り
「じ・・・自分で歩けるから・・・下ろして・・・。」


ヤヨイは恥ずかしくて、照れながら呟いた。


だって今まで、こんな風に優しく扱ってもらった事など、ヤヨイはなかったから。


大切に、壊れモノを扱うように守られてきたのは、いつもサツキであったのだ。


「いや・・・。
部屋までこうして行こう。」


ヤヨイの言葉には構わずに、ハクリュウは歩き出した。


恥ずかしくも心地よく、ハクリュウの腕に揺られながら、ふとヤヨイは思った。


『そう言えば・・・。』


「ねぇ。ハクリュウ。
私、名前を言ってなかったと思うんだけど、なんで知ってるの?」


「俺、ヤヨイの事は全部知ってるよ。
どんな風に今まで暮らしてきたのか。
どんな性格の娘なのか。
あの時、全部見させてもらったからね。」

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