竜王様のお気に入り
薄く目を開けて、竜王は扉の向こうに声を飛ばす。


「しばし待て。
身支度を済ませたら、声をかける。」


ハクリュウの声がヤヨイの耳にも届いた。


まだ、夢見心地で両目を擦る。


「ハクリュウ。
どうしたの?」


「あのまま眠ってしまったらしいな。
俺は、湯を浴びてくる。
ヤヨイはまだ、眠っていていいよ。」


ハクリュウの部屋は広く、勿論専用の浴室も備えられていた。


食堂での食事とは、天地ほども違う充足感が、ハクリュウを夢中にさせた。


だがハクリュウには、竜王としての責務がある。


いつまでも酔いしれてはいられない。


切り替えねばならなかった。

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