アラサーだって夢をみる


(あれ?)

停まっていた車が思っていた車と違っていた。
ブログやオフィシャルで紹介されているのは高級輸入車なのに、三神さんがドアを開けてくれたのは国産のスポーツカーだった。

「あれは公開用だよ」

三神さんは不思議そうな私にそう説明して、キャリーケースをトランクに入れてくれた。

私の年代で車好きなら知らない人間はいないであろう車。
10年くらい前に生産終了しているけど、今もファンが多いスポーツカー。
それも黒。

「素敵な趣味ですねー!」

私も大好きな車だったし、何よりも三神さんに似合いすぎる。

「古いから維持が大変なんだよ」

燃費も悪いしねと言いながらも嬉しそうで本当にこの車が好きなんだなと思う。

独得のエンジン音が心地好い。
それに運転する三神さんの横顔が素敵過ぎて見惚れてしまう。

でも、これ以上好きにならないようにしなきゃ。
もうお別れなんだから。


< 41 / 82 >

この作品をシェア

pagetop