愛を待つ桜
そのまま、夏海の背中を壁につけると、ゆっくりと一緒に腰を下ろす。

真っ白い首筋が目の前にあり、聡は唇で赤い刻印を押して廻った。
そして彼女の身体を抱き締めたまま、クローゼットの床に横たわる。ブラウスもブラジャーも上まで捲り上げ、露わになった胸の先端を聡は口に含む。
柔らかい……それでいて弾力のあるふたつの乳房を、聡は夢中になって愛撫した。

次第に、聡の指は下に向かって進み、夏海の体を無防備にして行く。


「あ……あの、私……」

「私を信じて、身を任せてくれ。君が欲しい」


聡は急いで自分自身を窮屈な中から解放すると、夏海の脚の間に身体を沈めた。


「あ! やっ……やだ」

「黙って。もう、止められない」


それは12年ぶりのセックスだった。女を欲しがることもなくなり、自分の中の男は死んだと思っていた。

だが、彼女に出逢った瞬間、運命を感じた。

抱かずにはいられない、そんな想いで彼女の腰を掴み強引に押し込む。


その瞬間、夏海は小さく悲鳴を上げた。
きつく唇を噛み締め、涙が一滴こめかみを伝う。彼女の指先はきつく聡の腕を握り締めた。


「き、君は……まさか」


聡も驚きを隠せない。
キスの仕草から経験は少ないだろう、と思っていた。だが、まさか処女だとは。


「すまない。もう……引けそうにない。決して、このままにはしない。だから、私に全てを許してくれ」


涙に潤んだ瞳が小さく肯いた。
それを確認して、聡は奥まで達すると、ゆっくり……そして少しずつ……夏海の身体を愛撫しながら、悦びへと誘うように腰を揺らし始める。
しだいに、繋がった部分からじんわりと快感が広がっていく

夏海も痛みが治まったのか、流されるままに身を委ねている。

3帖程度しかないクローゼットの中で、愛を交わすなど信じられない経験だ。
それだけに、快感も半端ではなかった。

聡は夢中になって腰を突き上げそうになるのをどうにか抑え、彼女に負担を掛けないよう必死で堪えた。
だが抵抗むなしく、限界はかなり早く訪れる。

あっと思った瞬間、快感が全身を貫いた。
聡は夏海の身体を抱き締め、最後の瞬間を迎えたのだった。


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