愛を待つ桜
セックスはかろうじてふたりを繋ぐ絆だった。

どうしようもなく求め合い、悦びの果実を分け合うことで、夏海は聡との関係に可能性を見出せたのだ。


しかし、この夜のセックスに愛はなく、ただの暴力であった。


聡にしても、快楽とは程遠い、こんな抱き方は本意ではない。

だが、心の底に染み付いたコンプレックスが強烈な妬みを生み、彼の心と体をコントロール不能に陥れた。


「どうせ、セックスに不慣れな俺を匡と笑っていたんだろう? ああ、その通りだ。昔も笑われて、散々馬鹿にされたさ。ちょっと何かあると、すぐに勃たなくなる。3年前もそうだ。お前に騙されて裏切られて……女は抱けなくなった。なのに、お前は抱けるんだ! すぐにこうなる。悔しいが……俺は、お前の体の虜だ!」


聡は、1度堰を切ったどす黒い感情を止める事ができない。


「同じ女に、2度も裏切られるのはご免だ。そのときは、一生女が抱けなくてもお前とは別れる! 悠と離れたくなければ俺に従え。判ったな!」


苦痛に顔を歪ませ、やめてほしい、と懇願する夏海に……聡は一方的に思いを遂げたのだった。


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