愛を待つ桜
思いのほか大きな音に、夏海はビクッとして首を竦めた。


「そんなことで誰が誤解する！？」

「でも……」

「鑑定などしなくとも悠は匡の子供だと、お前は言っていたそうだな。鑑定は無駄だ、と。匡も昔のことを詫びていたそうじゃないか！　それでもまだ、白を切るのか！」


おそらく実光だろう。由美の言葉を丸々信用したのだ。


「そんなことは言ってません！　匡さんは、３年前にあなたやお義父様に嘘を吐いて悪かったと、私に謝ってくれたんです。自分のせいで私たちが別れたんじゃないか、と。あなたにも、ちゃんと話して謝ったって……」


夏海は誤解を解こうと懸命に釈明するが、


「都合のいいことを言うな！　俺には、お前と関係したことを謝罪してくれたんだ。奴も、子供は鑑定したのか、と気にしていた。心当たりがあるなら当然だ！」


聡の耳には弁解としか届かない。

それでも、夏海は最後の想いを込めて叫ぶ。


「そんなバカな。何度言ったら判るの？　悠はあなたの子よ。私は、あなた以外の人に抱かれたことなんて１度もないわ。ひと目で恋に落ちて、あなただけを愛してきたのに……どうして信じてくれないの！？　お願いだから、少しでも愛してくれたなら、私を信じて！」


真っ直ぐに、ただ聡の瞳を見つめて訴えた。


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