愛を待つ桜
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「ママぁ~ゆうくんのパパだよ。ほいくえんでパパのえをかいたよ」
鯉のぼりの時期が過ぎて、ちょうど父の日が近づいていたような気がする。
悠も小さかったので記憶は正確ではない。だが、その絵を見せた瞬間、母が泣き出したのだ。
母の夏海《なつみ》は悠にとって自慢の母だった。
保育園でも皆から「ママ美人だね~」と言われて嬉しかったことを覚えている。悠の記憶の中で、母が泣いたのはその時だけだった。
「悠くん、ごめんね。ごめんなさい。ママを許して」
ポロポロ涙を零しながら、母は悠に抱きついた。ギュッと抱き締めて何度も何度も謝ったのだ。
悠はパパの絵を描いたことを後悔した。
自分がパパの絵を描いたから、母が泣き出したに違いない。大事な母を自分が泣かせたのだ、と。
「ママぁ、ママぁ、ごめんなさい」
母に抱きつき、もう描かない。2度と描かないから泣かないで――そう叫んでいたと思う。
あの頃まで、確かに悠に父はいなかった。
ずっと長い間忘れていたけれど、納戸で鯉のぼりを見つけて、思い出したのだ。
庭に立っている鯉のぼりは悠の為のものではない。悠の為に母が買ってくれた鯉のぼりは、先端に風車の付いた、この小さなものだった。
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「ママぁ~ゆうくんのパパだよ。ほいくえんでパパのえをかいたよ」
鯉のぼりの時期が過ぎて、ちょうど父の日が近づいていたような気がする。
悠も小さかったので記憶は正確ではない。だが、その絵を見せた瞬間、母が泣き出したのだ。
母の夏海《なつみ》は悠にとって自慢の母だった。
保育園でも皆から「ママ美人だね~」と言われて嬉しかったことを覚えている。悠の記憶の中で、母が泣いたのはその時だけだった。
「悠くん、ごめんね。ごめんなさい。ママを許して」
ポロポロ涙を零しながら、母は悠に抱きついた。ギュッと抱き締めて何度も何度も謝ったのだ。
悠はパパの絵を描いたことを後悔した。
自分がパパの絵を描いたから、母が泣き出したに違いない。大事な母を自分が泣かせたのだ、と。
「ママぁ、ママぁ、ごめんなさい」
母に抱きつき、もう描かない。2度と描かないから泣かないで――そう叫んでいたと思う。
あの頃まで、確かに悠に父はいなかった。
ずっと長い間忘れていたけれど、納戸で鯉のぼりを見つけて、思い出したのだ。
庭に立っている鯉のぼりは悠の為のものではない。悠の為に母が買ってくれた鯉のぼりは、先端に風車の付いた、この小さなものだった。
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