ランデヴー
その声にふと振り向くと、私の顔を見た倉橋君は一瞬驚き、その後にキュッと眉を寄せて険しい表情を見せた。



「……泣いたんですか?」


そう問われ、私もハッとする。


メイクで上手くごまかしたつもりだったが、やっぱり丸わかりらしい。


何だか急に恥ずかしくなり、私は顔を背けて「うん、ちょっとね……」と小さな声で答える。



「あの……すみませんでした。花火大会の日のこと……」


どうやら噂を例外なく耳にしたらしい倉橋君は、申し訳なさそうな声でそう言った。


もしかしたら、噂の件で私が泣いたのだと思ったのかもしれない。



「別に。倉橋君のせいじゃないから、気にしないで」


そう。
倉橋君が謝ることではない。


確かに倉橋君が誘わなければこんなことにはならなかったかもしれないが、最終的に行くことを決めたのは、他の誰でもない、自分自身だ。


誰かを責めて収まる訳でもないし、責める権利も私にはなかった。
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