ランデヴー
私がどんなに努力をして自分を磨いても、陽介がどんなにそんな私を愛おしく思おうとも、結局は陽介と奥さんの絆には勝てないのだ。


奥さんと別れられない、というのはそういうことなんだと思った。



「……わかった」


私は重い口を無理矢理口に開き、心とは裏腹に了承の言葉を紡いだ。



「陽介の気持ち、わかった。でも……今はまだ何も考えられないから……少し時間、くれるかな――」


そう言い終わるか言い終わらないかのうちに、私は「ゆかり……!」という声と共に陽介にギュッと抱きしめられていた。



「ゆかり……ごめん……!」


強く強く力がこもったその腕の中で、私はそっと目を閉じる。


私がどんな気持ちでそう言ったのか、陽介にはわかっている。


彼の肩は微かに震えていて、私も腕を背中に回すとその体をキュッと抱きしめ返した。



私たちの愛が成就することはない。



でもお互いに気持ちがある限りは、この関係を続けていたいと。


いや、続いていくんだと。


ずっと、そう思っていた。
< 165 / 447 >

この作品をシェア

pagetop