ランデヴー
あの告白の後、倉橋君と前田さんとの間でどんな話が付いたのかはわからないが、まるで何事もなかったかのように振る舞う2人は私なんかよりよっぽど大人なのかもしれない。



私だったら……もしも陽介と別れたら――。
もう仕事以外の話はできない気がする。


そんなに無邪気に近寄る勇気は、私にはない。



あれから前田さんが面と向かって何かを言ってくることはないが、私について決して快くは思っていないはずだ。


それは、時々チラリと飛んでくる視線で感じ取れることだった。



そんな彼女が私と倉橋君の噂について、あれはデマだと同期らしき女性に話す姿を目撃したと、佐和子が教えてくれたのがつい先日のこと。


だとしたら、恐らく倉橋君が前田さんに「坂下さんとは付き合ってない」と、きちんと訂正してくれたのだろうと想像できた。



エレベーターが控えめな音を鳴らして15Fに到着し、倉橋君と2人会議室へと向かう。


大人しく後ろを歩く倉橋君の方を少し振り返り、私は意を決して口を開いた。
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