ランデヴー
「何で私が倉橋君にそんなこと言われなきゃいけないの。前も言ったけど、倉橋君には関係ないことだから。いちいち口出ししないで」


「関係ありますよ。俺は好きな人だからって甘やかしたりはしません。坂下さんが幸せになる恋愛をしてるなら、何も言いませんけど……そうじゃないでしょう?」


「…………」


「坂下さんがそんなんだと、逆に俺が幸せにしなきゃって思いますよ」



私は見事に何も言い返せなかった。


そして瞬間、陽介の言葉が脳裏に浮かび上がる。



『俺の手で幸せにしてやれないなら、いっそ手放すべきなんだと……』



そう、言っていた。


いっそ、手放す、と。



突然あの日の辛い気持ちが蘇り、気付けば無意識に「やめて……」と唇が動いていた。



「そんな言い方しないでよ……!」


振り絞るような声でそう言って、両手で耳を塞ぐ。



やめてよ、私の幸せをどうして他人が決めるの……どうして……どうして……。


ギュッと目を閉じ陽介を求める闇の中で、遠く「坂下さん……?」と呼ぶ声が聞こえた。
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