ランデヴー
だいたい、私がこんなことになっているのは倉橋君のせいなのに……。


改めてあの日の倉橋君の言動を思い出し、心の奥底から腹立たしい気持ちがむくむくと込み上げてきた。



「何か、むかつくよね……」


「え?」


「何でそんなに冷静なの……。倉橋君のそういうとこ、ホントむかつくんだけど」


俯きながら「普通あんなことされたら通報だっつーの」とボソボソ呟く私を見て、倉橋君は再びプッと吹き出した。



「え! ここ笑うとこじゃ――」


「可愛いですね、本当に」


「ちょ……可愛いって何!」


ストレートにそんな台詞を吐かれ、私は一気に頬が熱くなるのを感じた。


後輩に――倉橋君にそんなことを言われ、胸の奥から何だかむずがゆいような、くすぐったいような難解な感情が沸き上がる。



「いえ……。俺はいつも坂下さんにドキドキしてますよ」


「……嘘はいいから」


「嘘じゃないです、本当ですって。ただ、顔に出さないようにしてるだけで」


倉橋君の言ってることが事実なら、彼は相当なポーカーフェイスの持ち主だ。
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