ランデヴー
「え、で、でも……え?」


まだ事態が上手く飲み込めていない私を余所に、陽介は「手伝うよ」と言いながら立ち上がって手を洗うと、食器を出し始めた。


そんな陽介の背中を目で追いかけながら、私の心の中は深い霧が一気に広がっていくかのような、ものすごい不安に襲われていた。



もしかして――最後の思い出作り、とか……?


別れる前に、楽しい思い出を作ろうとしているのだろうか。



だとしたら……私はどうする?


行くの? 行かないの?



膝に置いた手をギュッと握り締める。


1度息を吸い込んで問い掛けようとする唇を、クイッと結んだ。



例え……例え思い出作りだとしても、それでもいいって。
そう思ったから。


理由が何であれ、私は陽介とドライブがしたい。


もしも最初で最後なのだとしたら、尚更そう思う。



だがそれ以前に、私には聞かなくてはならないことがあるはずだ。


1番知りたくて、でも1番聞きたくないことを。
< 199 / 447 >

この作品をシェア

pagetop