ランデヴー
そこには1人の女性がポツン、と立っていた。



何だか儚げな佇まいのその人は、全く見覚えのない女性だ。


宗教の勧誘かもしれない……そう首を傾げながらも、私は受話器を上げて「はい」と返事をする。


この2日間一言も言葉を発していなかったから、もしかしたら少しでも人と会話がしたかったのかもしれない。



するとその女性は落ち着き払った様子で口を開くと、こう言ったのだ。



「初めまして。香川と申します」



良く知った名字にドクンと鼓動が打ち付け、一瞬反応ができなかった。


まさか、と思った。



私の知り合いに、香川という人は陽介しかいない。


そして、もう1人香川という名前の可能性があるとしたら、それは――。



「香川陽介の、家内です」


その人は戸惑う私を嘲笑うかのように口元に笑みを浮かべ、落ち着いた様子でそう続けた。
< 277 / 447 >

この作品をシェア

pagetop