ランデヴー
でも、倉橋君は違う。


私よりも後輩だという事実が大前提となるが、教えを請う時は真剣だし、私のことを頼りにしてくれている。



それを単純に「嬉しい」と感じている自分がいることは確かであり、またそれは、この会社に来て初めて感じる気持ちだった。



「倉橋君も頑張れば、これくらいすぐ理解できるようになるよ」


私はそう言いながら、引き出しから数冊の本を取り出して、倉橋君に手渡した。



「え……いいんですか?」


「うん。今使った関数、確か載ってたと思うから」


それは、かつて私が自腹で買った参考書だ。



入社したての頃あまりにもできないことが悔しくて、色んな本を買い漁った。


その中でも特に役立った本だった。


今の所使わないし、きっと倉橋君にも役立つと思うから。



「有り難うございます」


倉橋君は、その美麗な顔をくしゃりとさせて、嬉しそうに笑った。


その笑顔に、私も頬が緩むのを感じる。
< 28 / 447 >

この作品をシェア

pagetop