ランデヴー
お水を持ってきた店員さんに紅茶を注文すると、微妙な沈黙がその場に流れる。


紅茶が来るまでの間、私達はずっと無言だった。


私の方から口を開くのは躊躇われ、響子さんの出方を伺う。



だが、響子さんはまるで親しい友人とでも会っているかのように落ち着いた様子で、時々既に目の前にあるコーヒーを口に運んでいた。


私はと言えば、さっきから心臓が口から飛び出しそうな程にドキドキと暴れ回り、かなり緊張をしているというのに。



これが本妻の余裕、というものなのだろうか。



水を飲もうと伸ばした手が、小さく震える。


一瞬だけその手をギュッと握り締めると結局手を引っ込めて、震えを抑えようと小さく息を吐き出した。



この場に流れる無意味な時間が、更に私の心を息苦しくさせる。


緊張がピークに達して一筋の汗が背中を伝った時、店員さんが紅茶をテーブルに運んできた。



カチャカチャと目の前に紅茶の準備がされていく様子を無言で見つめ、店員さんが去って行くのを見届けた所で、ようやく響子さんがその口を開いた。
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