ランデヴー
もしかしたら陽介は奥さんと上手くいっていないのではないか――そう思ったことは1度や2度ではない。


むしろそうであればいいと、強く望んでさえいた。



そんな彼女が、今目の前にこうしている。


そのことが、酷く非現実なものに感じた。



だが本人を見ただけでは、普段どんな風に陽介と過ごしているのかなんて、伺い知れる由もない。



複雑な気持ちで視線を投げる私に気付き、彼女がおもむろに立ち上がった。


慌てた私はようやくテーブルに近付くと、「初めまして、坂下です」と言いながら深々とお辞儀する。


彼女も「香川 響子です」と名乗り、頭を下げた。



私はそれを聞き、『響子さん……』と心の中で復唱した。


今まで想像の中で羨んできた彼女を、初めて現実のものとして認識した瞬間だった。



「どうぞ、座って下さい」


すらりとした腕で向かいの席へと促され、私は彼女の目の前に腰を下ろした。
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