ランデヴー
怖じ気づいてるだなんて思われたくなかったのに、自らの行動で余計に追い詰められた気がして、泣きたい気持ちになった。



「あの……そんなに緊張なさらないで下さい。私はただ、あなたにお願いがあって来たのですから」


「お願い……」


「はい」


小さく反応した私に、響子さんが穏やかな表情のまま口を開いた。



「……単刀直入に申します」


胸の鼓動が一段と早くなり、響子さんを見る私の目はきっと不安そうに見開かれていることだろう。


そんな私の目の前で、響子さんは淀みなく言い放った。



「――主人と別れて下さい」


私の目を真っ直ぐに見据え、揺るぎない光を宿した瞳はとても強く、その裏に見えたのは確かな自信だった。



陳腐な2時間ドラマを見ているみたい……。


私は漠然とそんな感想を持った。


自分の身にこういう出来事が起こるなんて、1時間前までは予想すらしていなかったのだから。
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