ランデヴー
だが響子さんが本気で浮気を疑ったのは、つい最近のことだ。


それは「子供が欲しい」と、陽介に告げた時の反応だったと言う。



普段なら、陽介は響子さんの頼みを絶対に断らない。


何故かはわからないが、響子さんはそう断言した。


陽介が響子さんの願いを断ることなど、有り得ないことなのだと。



それなのに、それを聞いた陽介は明らかに狼狽した。


そして、「少し考えさせて欲しい」と。


そう答えたのだ。



正直、私はこの時嬉しい気持ちが込み上げるのを抑えることができなかった。


もちろん響子さんに気付かれないように、ではあるが。
心の中で密かに喜びを噛み締めていた。



だが、それはただ一時の喜びを私に与えたに過ぎない。


だってそれこそが、響子さんが陽介を疑う決め手となったのだから。
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