ランデヴー
響子さんは長い間、子供はいらないと思い続けていたそうだ。


だから最初は、陽介のそんな態度を自分が急に考えを変えたのだから仕方のないことだ、と受け止めていた。



でもそれと同時に、やはりおかしいという思いも拭えなかった。


だから――。



「専門の業者に依頼して、調査してもらうことにしたんです」


響子さんはやはり乱れることなく、変わらぬ口調でそう言い放った。


そんな彼女とは対照的に、私はその一言で体中から血の気が引くのを感じた。



浮気調査……まさかそんなことをされているなんて、私は全く気付かずにいた。


もちろんプロの人が動いているのだから、気付かれてしまったら意味のないことだ。



でもそれはあんまりなのではないかと、怒りにも似た感情が込み上げる。


私の知らない所で私達2人は見張られていた……プライベートを覗かれるということは、気分のいいものではない。



と同時に、もう逃げられない、と確信した。


恐らく……あの日のデートの様子も報告されているのだろう。
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