ランデヴー
「よう……彼のことを、愛してないんですか? どうしてそんなに冷静でいられるんですか? 愛してたら……もっと私に対して怒りを抱くはずなんじゃないんですか?」


「あの――」


「そんな程度なんだったら……陽介に対する愛情がそんなものなんだったら……っ」


私は一瞬唇をキュッと噛み締め、痛い程に力を入れた瞳で響子さんのことを睨み付けた。



「……私に、下さい。彼を、私に下さい。私の方があなたよりもずっとずっと、彼を愛しています」


そう言い切ると、私の目からは涙が溢れていた。



馬鹿だ……本妻に向かってこんなにムキになって、滑稽なことこの上ない。



しかも泣いてしまうなんて……失笑されても仕方のない行動だ。


なんて情けない姿なんだろう。



でも……どんな醜態を晒しても、言ったことに後悔はなかった。


こんな程度の気持ちで陽介と一緒にいられるなんて、おかしい。


私こそが陽介の傍にいるべきだ、と。


横から入り込んだ分際であることは百も承知で、この時の私は本気でそう思っていた。
< 297 / 447 >

この作品をシェア

pagetop