ランデヴー
だからさっき、わざわざ証拠の品を見せたのか……と思い当たる。


断ることはできない、もう逃げられないのだと思い知らせる為に。



私の出すべき答えは、もはや1つしかない。


わかってる、わかっているのに……言葉が出ない。



私はギュッと目を閉じると、口を開いて小さく息を吸い込んだ。


唇が震えていることに気付き、一瞬キュッと噛み締めて再びスッと息を吸う。



「……わかりました」


そう呟くと同時に、涙が溢れそうになる。



「……もう、彼とは……会いません」


言いたくもないこの言葉を、私の口は吐く。


無理矢理に。



涙を懸命に堪えながら、私は膝に置いた手をギュッと握り締めた。


泣くもんか。
震える唇を噛み締めながら、そう思った。


それは、私の最後のプライドなのかもしれない。
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