ランデヴー
すると突然パチッと廊下に灯りが点った。


倉橋君が勝手に点けたのだ。



「ねぇ、私本当に平気なの。お願いだから、帰ってよ」


倉橋君を軽く睨むようにして言ってみたものの、彼は不意にその目を険しくさせて私を睨み返してきた。


その目には有無を言わせぬ迫力があって、私は少したじろいでしまう。



「言ったでしょう? 俺は甘やかしたりしないって。坂下さんのことをどうにかしたら帰ります」


そう言い捨てて図々しく上がり込んで来る倉橋君に、私は唖然とした。



「やだ、ホント帰ってよ! 入ってこないで!」


そう喚く私の体を「はいはい」と言いながら横から抱きかかえるようにして、倉橋君は廊下を進んで行く。


私は力の入らない手で倉橋君の体を押し返すが、それはただ疲れるだけの行為だった。



「歩けないならお姫様だっこでもしますか?」


「やめてよ、もう本当に構わないで……!」


そう言いながらも振り解くことは出来ずに、私の体は半ば引き摺られるかのように易々と運ばれてしまう。
< 350 / 447 >

この作品をシェア

pagetop