ランデヴー
そんな私に、倉橋君が冷蔵庫から取ってきたペットボトルを手渡した。



「水飲んで下さい。シャワーなんか浴びて汗掻いたと思うし。水分摂らないと脱水症状が怖いですから」


「うん……」


倉橋君は私がそれをゴクゴクと飲むのを確認しながらドライヤーのプラグをコンセントに突っ込むと、私の後ろのソファーに腰掛ける。



体内に十分な水分を送り込んだ私は何となく満たされた気持ちになり、膝を抱えてその上に顎を乗せた。


そうすると体の重さも手伝って、うとうとと瞼が下がってくる。



倉橋君は「寝てていいですよ」と後ろから声をかけ、私の髪をドライヤーで乾かし始めた。


人に髪を乾かされるなんて、美容院以外ではそうそうあることではない。


温かい風が心地良くて、膝の上に顔を埋めた。



倉橋君は陽介とのことを無理矢理聞いてきたりはしないし、心配しての暴言や無理強いはあっても、それ以外に私の嫌がるようなことは決してしない。


何だかんだ言いながら、本当はとても優しいのだ。



どうしてこの人は、私の為にこんなにも一生懸命なんだろう……。


私は彼に返せるものなど何1つないのに……。
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