ランデヴー
「ねぇ、もう帰ったら?」


「嫌です。髪渇かしてあげますから、こっち来て下さい」


「え、いいから放っといてよ!」


「放っておける訳ないでしょう!」


そんな攻防をしばしの間繰り返すも、結局具合の悪さも手伝って根負けした私は、倉橋君に連れられてソファーの前に座らされるという結果に至っていた。



目の前にはお粥が用意されていたが、それを見ても全くと言っていい程食欲は湧いてこない。



「これ……倉橋君が作ったの?」


ドライヤーを取りに行った倉橋君が戻って来たのを見計らって、私はそう尋ねた。


卵粥の隣には梅干しまで用意されていて、まるで至れり尽くせりの食卓だ。



「そうですよ。食べられますか?」


「……ごめん、無理……」


「ですよね。無理しなくていいです、食べられそうだったら、後ででも温めて食べて下さい」


「うん、有り難う……」


倉橋君の優しさに心を打たれた私は、素直にお礼の気持ちを述べる。
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