ランデヴー
「や……近い……」


突然近付いた距離に緊張した私が思わず後ずさると、倉橋君はふと曇らせた瞳を伏せて「すみません」と謝った。


その表情に、チクリと胸が痛む。



「体温計ありますか? 熱、測ってみて下さい」


倉橋君はすぐに何事もなかったかのような顔でそう言って、立ち上がった。



「あ、そこの引き出しに……」


そう言って指さすと、倉橋君はそこから体温計を取り出して私に手渡す。


それを受け取りながら、私は心の中でもやもやと考えていた。



正直何も飾らずにいられる倉橋君の隣は、意外と居心地が良かったりする。


でも私の心に陽介がいる限り、倉橋君のことを恋愛対象として考えることができない。



実際ときめかない訳ではない。


好青年で優しくて……私には勿体ない程の人だ。
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